本日は、ドル建て終身保険は本当に得なのかどうかを解説していきます。
私がFPとして相談に乗っている際も、保険会社や、保険代理店FPからの勧めでドル建て終身保険に入っている人は非常に多かったです。
ぜひご覧ください。
資産運用として使うのであれば損
もし後ほど解約をして現金として下ろすことを目的に入っているのであれば、他の資産形成の方法に比べてパフォーマンスが低く、損をする可能性が高いです。
具体的な商品を用いて、計算をしていきます。
ドル建て終身保険をGoogleで調べて、1番上に出てきた「メットライフ生命 ドルスマートS」という商品を見ていきます。
※2021年8月現在のホームページより抜粋
https://www.metlife.co.jp/products/fx/iswl-dollar/
この保険に30歳の男性が加入して、15年間保険料を支払うと、積立利率が2.5%の場合は108.9%の解約返戻金として取り出せると記載されています。
積立利率2.5%というと、銀行預金金利より圧倒的に高くお得に見えますが、積立利率2.5%=金利2.5%や、積立利率2.5%=利回り2.5%とはなりません。
実はこの積立利率2.5%は、だいたい利回り0.7%です。
ドル計算だと分かりづらいので、1USドル=100円と仮定して、26,860円(=268.80USドル×100円)を15年間積立て、その後5年間据え置きで運用した場合を計算しました。
以下のスクリーンショットの様に、利回りが0.7%だった場合、20年後の資産は約527万円となり、元金の約109%となります。
※左:金融庁の資産運用シミュレーションより作成(https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/moneyplan_sim/index.html)
※右:アセットマネジメントOneの資産運用シミュレーションより作成(http://www.am-one.co.jp/shisankeisei/simulation.html)
積立利率2.5%と実際の利回りの差が保険会社が取っている手数料です。
利回りの半分以上が手数料となっております。
さらにここから為替手数料も取られるため、手残りはかなり少なくなるでしょう。
もちろん手数料の中には、加入者のための死亡保険の手数料も含まれますが、それを差し引いても手数料が割高の商品と言え、ドル建て終身保険のデメリットと言えます。
また、このようなドル建て終身保険は先進国債券で運用されていますが、先進国債券のインデックスファンドを買えば、直近1~10年間の平均利回りは3.0%強となっており、期待リターンとしても2.0%前後と言われております。
保険会社を挟まずに、NISAや確定拠出年金(or iDeCo)などを活用しつつ、投資信託で先進国債券に投資をする方が賢い選択です。
死亡保障として使うのであれば悪くは無い
老後の死亡保障として遺族にお金を遺す目的であれば、ドル建て終身保険で悪くは無いパフォーマンスが出せます。
先ほどと同じく、「メットライフ生命 ドルスマートS」という商品を見ていきます。
※2021年8月現在のホームページより抜粋
https://www.metlife.co.jp/products/fx/iswl-dollar/
この保険に30歳の男性が加入して、15年間268.6USドル/月の保険料を支払うと、一生涯100,000USドルの死亡保障が確保できます。
厚生労働省のデータによると、30歳の男性の平均余命は52年間(82歳まで)です。
そのため、15年間積立てをして、37年間据え置きで運用した場合で計算してみます。
金額は先程と同様に、26,860円(=268.6USドル×100円)で計算します。
以下のスクリーンショットの様に、利回りが約1.7%であった場合、平均余命である82歳に1,000万円(=100,000USドル×100円)が準備可能です。
※左:金融庁の資産運用シミュレーションより作成(https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/moneyplan_sim/index.html)
※右:アセットマネジメントOneの資産運用シミュレーションより作成(http://www.am-one.co.jp/shisankeisei/simulation.html)
つまり、死亡保障を目的にドルスマートSに加入した場合、積立利率2.5%=利回り1.7%として活用可能です。
利回り2.0%よりやや下回りますが、この利回りが最低保障されていると考えると、悪くはないかと思います。
ドル建て保険に限らず、終身保険(=終身死亡保険)には死亡保障のコストが含まれるので、死亡保障を目的とした場合にそこそこのパフォーマンスが出るのがドル建て終身保険のメリットです。
しかしこのように見ても、保険会社が取っている手数料は利回り0.8%/年もあると言えます。
似たような運用ができる先進国債券のインデックスファンドは年間0.2%程度の信託報酬手数料ですので、保険会社の手数料が如何に高いかがわかります。
まとめ
メットライフ生命のドルスマートSを具体例として見ていきながら、ドル建て終身保険を解説していきました。
利回りで見ると以下の通りとなり、死亡保障を目的にするのであれば、利回りが最低保障されることも加味して悪くはないかと思います。
・解約返戻金が目的の場合:約0.7%
・死亡保障が目的の場合:約1.7%
※30歳男性が死亡保障100,000USドルを確保するために、15年間保険料を支払う場合
個人的には加入することはない保険です。
最後に
いかがでしたでしょうか?
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以下、関連記事です。
円建て終身保険についても解説しています。
個人的には保険での資産形成より、投資信託での資産形成をオススメします。
投資信託での資産形成をする場合、つみたてNISAを活用することが有効です。
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